黄昏な日々の日記・・・の予定
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◆魔術士オーフェン・無謀編(ss)◆
これから語る内容はキエサルヒマ大陸における、
1人の若者による貧困、苦難、困難、血と汗と涙の冒険物語である。
これから語る内容はキエサルヒマ大陸における、
1人の若者による貧困、苦難、困難、血と汗と涙の冒険物語である。
見た目20才ほど、目つきがするどく上から下まで全身黒一色なその姿はこの世界でもかなり目立つといっていいだろう。もっともそれが魔術士ということならば、誰も気にする者などいないのがこの世界での世間の反応というものであろう。
そして黒のシャツとジャケットに隠れるように光る銀のペンダント、一本足のドラゴンが剣にからみついたそれは大陸黒魔術の最高峰《牙の塔》で学んだ証であり、つまり持ち主は一流の術者の身分を示すものともいえよう。
もっともその身分を証すには”大陸魔術士同盟”に所属してなければならないのだが・・
彼の名はオーフェン。本名は・・・別にあるのだが本人が何故か語りたがらない。・・いずれ話すときもくるだろう。
とある理由で《牙の塔》を出奔して数年、彼は大陸でも有数の都市、トトカンタに流れ着いていた。
~物語はここから始まる~
・・・そして再び旅に・・”はぐれ旅”に戻るその日まで・・・・・・
ここはトトカンタにある、どこにでもある宿の部屋。なんの変哲もないただの宿。しかし妙に居心地がいいのも事実であろう。
そうでなければ根無し草であり、目的あって旅をつづける彼が、一時とはいえ落ち着くはずがない。
もちろん正確には彼は滞在人ではない。
宿代を未納にもかかわらず滞在中であり、普通こういうのは客とは言わないだろう。
どちらかといえば”居候”に近いかもしれない。
もっとも本人は「宿代?・・なんだよ、その意味不明な単語は?」
などとうそぶき、宿屋の息子のマジクにあきれられていたが。
まぁ、宿の主人バグアップも、その息子マジクもどちらかといえばあまり金に執着するタイプではないだけに、おおむね彼にとってここは過ごし易いのは事実であろう。
そんな平和な(?)暮らしも最近、乱されつつある・・・その理由が・・・
「ちょっと、オーフェン!いつまで寝ているの、もう昼なのよ!」
部屋の外からなにやらうるさく、聞きなれた女の怒鳴り声が聞こえてくる。
彼女の名前はコンスタンス・マギー、普段はコギーと呼ばれている。一応、れっきとした派遣警察官である。つまりエリートである。
・・・一応というのは・・まぁ知る人ぞ知る問題警官なのだが・・・
そんな彼女が一層うるさく騒いで起こそうとする。それはある意味自殺行為ともいえよう・・・
「我は放つ光の白刃!」
ただでさえ寝起きの悪いオーフェンである。一筋の熱衝撃波が豪快に扉ごとコンスタンスを吹っとばして黒焦げにした。
・・もっとも彼女は慣れており、いつものごとくすぐに復活してしまうのだが・・
いずれにせよオーフェンが着替えるのに十分な時間である。
「今日はなんだよコギー。いっとくがお前の、のたくたパトロールに付き合う気はないからな。」
壊した扉を魔術で直しながらめんどくさそうにオーフェンが返事をする。
オーフェンは、とある一件以来彼女のおもり(タダ働き)をさせられており、副業たる金貸しの回収がやりにくくなっているので、あまり関わりたくないというのが本音である。
(もっとも、俺に働いた分の金をくれればいうことないんだがな)
「違うのよ、今回の任務はとてつもなく大事で重要な事件なのよ!あなたのその非常識きわまりない力と、ずうずうしい行動力と、ねじくれ曲がった性格が必要なのよ!」
「我は砕く原始の静寂!!」
・・・再び黒焦げになって気絶しているコンスタンスの横で、
「ま、暇つぶしにはいいかもな」
オーフェンは、窓の外を見ながらつぶやいた。
それから気絶しているコンスタンスこと、コギーをむりやりたたき起こして宿を出たオーフェンだが、ふと疑問がわいてきて
「だいたいなぁ、俺の力が必要なんて言って、またど~しょうもなくくだらない事か、アホらしい事なんだろうな~」
いまひとつやる気の無い口ぶりで呟いた独り言だが、すかさずコンスタンスは敏感に反応してきた。
「何いってんのよ!あんたから暴力を取ったらなんにも残らないじゃないの。せっかくコギーお姉さんが年中破壊活動が趣味と日課のあんたを見込んで連れていってあげるんだから、文句言わないの!」
「・・・いろいろとツッコミを入れてやりたいところだが、まあいい・・」
まあ彼も何かと後ろめたい事が多いのであろう。あえて反論はしなかった。
「で、これからどこに行くんだよ? いっとくが揉め事の類はゴメンだぞ、腹が減るからな」
「昼間から情けないこと言わないでよ。大体あんた昼まで寝てたくせに、お腹がすくわけないでしょう?」
「ここ26時間、砂糖水しか飲んでないこと知っといてよくそんな事が言えるな、お前は・・」
「あれ、今朝は台所になにも無かったの?」
「ああ、バグアップの野郎、最近妙に賢くなりやがってな。厨房に残り物を置かなくなりやがって、なんてセコイやつ!と思う今日この頃だった・・」
「・・・寄生生活もここまでいけば大したもんね・・・あとでガーナチョコでもおごってあげようかしらね・・・」
しみじみと言うコンスタンスを横目でにらみながら
「て、言うよりお前が俺のアルバイト代を払えば解決すると思うんだがな!」
しごく真っとうな事をオーフェンは言ったつもりだが、無論金銭面に厳しい彼女に通用するはずがない。
「冗談じゃないわよ。なんであたしがあんたにお金あげなきゃいけないわけ!?拒否よ、拒否!」
「・・・この無能警官・・誰がいつもいつも、てめえの後始末をしてやってると思っているんだか・・少しぐらいくれてもバチは当たらんと思うがね!そういうわけで給料の半分ぐらいはよこしてくれてもよろしいのではないかと思うのであります!」
「いや、そんな丁寧な口調されてもダメなものはダメなの。わかった?」
「・・・・わ~ってるよ、冗談だ」
まぁオーフェンもダメで元々と思っていたのであろう。軽く舌打ちしただけで、あっさり引き下がった。
そこで彼は、話が脱線していたことに気が付き、
「で、前に戻るけど一体どこまで行くつもりなんだ?」
いつのまにか2人はトトカンタ市の中心部にある街中に来ていた。
さすがに中央は繁華街だけあって、昼過ぎだというのにかなりの賑やかさに溢れている。
”そういえばマジクの通っている学校もたしかこの近くだったかな”とオーフェンが思いつつコンスタンスをみやるが、彼女はぐんぐん前に進んでいく。どうやら目的場所はこの街中ではないらしい。
そのまま歩き続けてそろそろ郊外に出るかというところで目的地に着いたらしく、彼女はくるりと一回転してオーフェンに向かって満面の笑みで、
「さあオーフェン、いまこそあなたの力を発揮する時よ!ちゃっちゃと片付けてね☆」
ここは公園であり、そこにはドーベルマンと呼ばれる野良犬とおぼしき大型犬が一匹、木の下で唸りを上げていた。
しばらくの間、頭の中が真っ白になるのを感じながら思った。”そうだよ、やるべきことをやらねばならないと”
・・・何も言わずに、猛犬めがけて彼女を蹴りとばした。
・・・10分後、満足したのか、犬はどこぞに消えていた。あとにはボロボロになった人間らしいモノが残されているが、もはやオーフェンの関心は露ほどにも残っていなかった。
地面に落ちている無能警官は放っといて、そのまま木の下に行き、手を差し出し小さい黒い塊を抱える。手の中には黒い子猫が震えていた。首輪が付いており飼い猫なのは間違いなさそうだ。そのまま地面に置いてやると、こちらを名残惜しそうに見ながら家に戻っていったようである。
「ふぅ~恐るべき相手だったな。オトリの大役ご苦労だったぞ、コギー。俺が猫好きなのを知っててうれしいぜ♪やっぱり相棒ってのは、こうでなくちゃな」
「・・・・・・・・あ・ん・た・ね・・・・・・・」
トトカンタは今日もおおむね一部のみ平和であった~
~いいからとっとと進めろよ!~ (おわり)
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